05/06: GW集中連載! 真空管アンプを設計しよう! その7
いよいよ連休最終日です。明日から仕事ですが、皆さん体調は大丈夫でしょうか? 私は連休中も会社に出ていたのでno problemであります。
さて、前回で設計がほぼ完了しました。あとは特性の向上です。まずは低域特性から。ある程度の投資でそれなりの結果を得るには、初段と出力段のカップリングコンデンサの容量を大きくすることです。このコンデンサは、出力段のグリッド抵抗と一緒になってハイパスフィルタを構成します。難しいことはさておき、カップリングコンデンサの容量を0.22μFから0.47μFにするだけで、低域が大分違ってきます。
次に高域特性の改善ですが、こちらはちと面倒です。改善できるポイントは二つありまして、一つは初段の出力インピーダンスを下げること、もう一つは出力段の入力容量を下げることです。前者については、初段の真空管を低rpのものに変えるだとか、SRPPによるドライブ段を挿入するとか、そういう面倒な(回路に手を入れなければならない)手しかありませんので、ここでは割愛します。
もう一つの方法である出力段の入力容量を下げる方法ですが、クロス中和という手段があります。これまた色々と難しいので詳細は割愛しますが、前述の書籍やサイトに詳細が掲載されていますので、そちらを参考にして下さい。
あとは、低域高域ともに、出力トランスをいいものに替えるのも効果的です。コストの面でちょっと高くつくかも知れませんが、効果は大きいです。
とまあこんな感じで真空管アンプの設計についてざっと流してみました。ここではモデル的な設計しかしませんでしたが、実際に自分で使うためのものを設計しようとする時は、あっち立てればこっち立たず、になります。結局は「これだけは譲れない」というポイントを決めて、他はある程度妥協することも必要です。
さて、今回の設計では図画を一切用いませんでした。実はBSch3Vという回路図エディタを使って、簡単な図ぐらいは示そうかなとも考えました。しかし! やっぱり自分の手を実際に動かしてみないと分からないことってありますよね? ということで一切を省略しました。手抜きではありませんよ、決して。ええ。
それでは皆さんの真空管アンプ生活に幸あらんことを祈念して、ひとまず今回はこれにて終了です。お疲れ様でした。
05/05: GW集中連載! 真空管アンプを設計しよう! その6
一昨日は終日ゆっくりと休み、昨日は谷川史子[W]の初期短編集を読んで悶絶していました。本日からアンプ設計を再開します。
さて、前回までのところで、大まかな設計は完了しています。おさらいしてみると、二段構成の全段差動PPアンプ、初段は12AX7、出力段は6C4C、負帰還なしで利得が8.3倍でした。
残るは、電源回路の設計です。整流、平滑後におよそ300Vを得られるB電源が必要です。また、6C4Cのフィラメントはできれば直流点火したいところ。6.3V 1Aを4本まかなえる整流回路も必要です。あとは12AX7のヒーター電圧ですが、傍熱管なのでこれは交流のままでOK。ここでは整流、平滑の詳細については割愛します。
忘れてはならないのが定電流回路です。初段には0.4mAが2本で0.8mA、出力段には60mAが2本で120mAの定電流回路が必要です。前者は定電流ダイオード、後者はトランジスタか三端子レギュレータによる定電流回路がよいでしょう。
ここで注意があります。初段の定電流回路をドライブするための電圧が必要です。初段グリッドは-1.5Vですが、この1.5Vだけでは定電流ダイオードは期待通りには動作しません。別途-5V程度のC電源を用意するか、『情熱の真空管アンプ』にあるようなダイオードによる電圧降下を利用したマイナス電源が必要です。
も一つ注意しときますと、このままでは出力段の定電流回路に掛かる電圧が45Vにもなります。ここに120mAですから、電力は5.4Wですね。これをすべて定電流回路に掛けると、半導体がパーになります。半導体に食わせるのは、せいぜい1W程度にして、残りは抵抗に任せます。
しかし、抵抗に5W弱食わせるのも、発熱の点から問題がありそうです。後述のグリッド電圧を-25V前後、カソード電位を20V前後、という風に分けることで、発熱については解決することができます(ただし、別途C電源が必要になります)。
これだけあれば十分でしょうか。いえいえ、もう一つ、大切なことが残っています。それは、出力段のDCバランスです。出力トランスに流れる電流値が上下で異なるとトランスが磁化してしまい、期待する低音域が得られなくなります。ではこれをどうやって解決するかと言うと、出力段のグリッド電圧を上下する回路を追加し、バランスを取るのです。真空管は工業製品ですが、意外と特性がバラバラなものです。
ではどうするか。『情熱の〜』にもあるような、片側のグリッドをアースして、もう片方のグリッドを0V〜+5V程度に調整できるよう分圧するのが簡単です。ただし、この方法だと、場合によっては上下の球を入れ替えたりする必要もあります。別途C電源を用意できるのであれば、上下の球を同時にバランスするようなグリッド調整回路を用意しましょう。こちらの方法を用いれば、球を差し替える必要はなくなります。
かなり駆け足になりましたが、これで一通りの真空管アンプの設計が完了したことになります。しかし、まだまだ改善の余地があります。という感じで続きます。
05/02: GW集中連載! 真空管アンプを設計しよう! その5
連休も中日を迎えた訳ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 今日は暖かいので、今シーズン初の半袖で過ごしております。
さて、前回は電圧増幅段(初段)のロードラインを引いてみましたが、Ep: 500Vとなっていました。出力段のプレート電圧が約300V(250V+45V)ですので、これは現実的ではありません。Ep: 250Vぐらいで線を引き直してみます。
Rp: 250KΩ、Ep: 240Vで引いてみると、Eg: -1.5V, Ep: 140V, Ip: 0.4mAというロードラインを導けます。前回同様に±0.7Vで、90Vから190V、つまり100Vp-pが得られます。110Vp-pにはちと足りませんが、今回はこれでよしとしましょう。
以上で初段と出力段のロードラインを引くことができましたので、ここで回路全体を見直してみましょう。まずは総合利得です。ここでは差動の上下の球を合成して計算しちゃいましょう。
初段はrp: 80KΩ、μ: 100の12AX7を、250KΩ負荷でドライブします。次段グリッド抵抗を470KΩとすると、負荷は250KΩ x2と470KΩ x2を並列に合成した負荷、つまり326KΩが交流に対するインピーダンスです。利得はμ x RL / (RL + rp) で求められますので、初段の利得は100 * 326 / (326 + 80 x2) = 67となります。
次に出力段の利得です。6C4Cはμ: 4.1, rp: 760Ω、交流負荷: 2.5KΩ x2ですので、利得は4.1 x 2500x2 / (2500 x2 + 760 x2) = 3.1となります。最後に、出力トランスのインピーダンス比です。入力: 5KΩ, 出力: 8Ωですから、sqrt(8 / 5000) = 1 / 25となります。
これらの値より、この回路の総合利得は 67 x 3.1 * 1 / 25 = 8.3です。欲を言えば、無帰還で10倍ぐらい欲しいところです。これにさらに負帰還を掛けるとなるとちと利得が足りないですが、直熱三極管なので気にしない方向で。という感じで続きます。
05/01: GW集中連載! 真空管アンプを設計しよう! その4
さて、6C4Cをフルドライブするには110Vp-pが必要です。110Vp-pをVrmsに直すと、およそ40Vrmsです。CDプレイヤーを直接接続する場合は1Vrmsの入力でボリュームが最大になるように設計すれば問題ありませんので、必要な利得は約40倍です。
しかしここで注意が必要です。差動増幅の場合、入力を上下の管で分け合うことになります。つまり単管あたりの入力は0.5Vrmsになりますので、80倍の利得が必要です。80倍もの利得を単段で得るには、12AX7(ECC83)といったμ=100ぐらいの三極電圧増幅管を使うか、五極電圧増幅管を使うことになります。五極管は色々と面倒なので、素直に三極管を使いましょう。
まずは12AX7のデータシートを取得します。Ep-Ip特性図のIp: 2.0mAとEp: 500Vを繋ぐ直線をえいやっと引いてみます。これがプレート抵抗250KΩのロードラインになります。ちょうどEg: -1.5VのところでEp: 200V, Ip: 1.2mAになりました。色々考えるのは手間なので、この動作点を使ってみましょう。
もちろん、この動作点も最適化されていないと思います。前掲の書籍を読みながら試行錯誤してみて下さい。ついでに書くと、Ep: 500Vは高すぎです。次回、線を引き直します。
さて、この動作点からロードラインでEgを0.5Vrmsつまり±0.7Vさせた時、Epはおよそ145Vから255Vまで変化します。何とまあ都合のよいことに、110Vp-pが得られました。という感じで続きます。
